水曜夕刻。
会社から帰宅したステは、予定通り気温の暖かいこの日に今年最後の芝刈りをしに外に出て行った。
芝刈り機を運転中のステを、窓から眺めていたすなポンは
「ものすごい形相してんな~。そんなに腰が痛いんだろうか。」と思っていた。
ステは1分もしないうちに、芝刈りをやめて、家に入って来ると、ものすごいうめき声をあげ、のたうちまわりはじめた。実際は痛みでのたうちまわることすらできない様子であった。
もしかして「救急車?」と思ったが、救急車を呼ぶと10万円くらいかかるという話を聞いたこともある。ほんとかどうか知らないので確認しておかなくてはならない。保険である程度カバーはされるだろうか?少なくともお金がかかることは確かだと思う。ここアメリカでは急病になってもウカウカ救急車など呼べないので、痛みと財布と相談しなくてはならない。
さて、ステから「救急車」の指示が出ないので、私はボケーっと見守るのみである。
血を噴き出しているとか心臓に手をあてているわけではないので、救急車である必要はないだろう。自家用車で十分だ。救急に連れて行くべきかと思ったが、その指示も出ないので、彼を見下ろし立ちすくむ。何か私が提案したところで100%の確率で却下されるのだから、会話するだけ無駄なことだ。
「腰じゃないよ。」とステが言った。
しゃべれそうだから、本人が決めるであろう。
その間にも、うめき声は大きくなるが、体の向きも変えられないような様子だ。
声をかけてあげるのがいいのか、そっとしておいてやるのがいいのか、明らかに大丈夫じゃない人に「大丈夫?」と言うのもはばかられる。「がんばって」とも言いたいが、ステは「がんばる」という言葉がキラいなので逆にカンにさわるであろう。「大丈夫」と「がんばって」の2つが使えないこの状況はキツい。「hang on(ふんばれ/持ちこたえろ)」という英語のエールも、私が英語で伝えるとなるとしらじらしい。
何もかける言葉がないので、遠巻きに様子を伺うのみのすなポン。
決して、どうでもいいとか思っているわけじゃぁないのだが・・。
「風呂」と指示が出たので湯を張っていると、ステが階段を這いずって上って来た。
2階に来て、数秒したところで、とうとう彼は観念して「病院連れてって」と言い出した。
大急ぎで財布と、保険証と、ケータイと、ケータイの充電器と、ipod touch 5 を持って車を飛ばす。車内でもステは身をよじって悪態をつきながら激痛と闘っていた。どういうポーズでも痛いらしい。最後には「プリーズ、Oh、プリーズ」と、信奉もしていない神様に頼んでいたようだ。
そうだ!いいセリフを思いついた。
「死なないでね。」
ウソでもなく、安易な気休めでもなく、私の最上級の願いがこもり、これ以上のエールはなかろう。
EMERGENCY(救急)
赤く光る看板が頼もしい。あそこに着けば大丈夫だ。
しばし待たされ、その間中も待ち合い室でステは悲鳴を上げる。永遠とも思われた15分待ちの後、診察のためベッドのある部屋に入る。
ステ「腎臓結石だと思うんですよね」
・・・・そういう情報は前もって私にもください。。。
そして少量のモルヒネを投与されたり、薬を入れられたり、MRIに入ったりして、2時間ほどして痛みがほとんどなくなったころ、
「やはり、腎臓結石でしたね。もう膀胱の入口まで降りてますから、次か、その次の排尿で出るでしょう。メッシュを渡すのでそこに石がひっかかるはずです。」
無事、帰宅。直後に排尿。
ストーン獲得☆
まだちょっと後遺症で少し痛いらしいけど、とりあえずケロッとしています。
元気になったステに、まずはひとこと。
「こんにゃく食べないからだよー。」
「こんにゃくは関係ない。」byステ
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